2016年6月6日月曜日

資料① 大阪金属問屋厚生年金基金 ~方向性再考に向けて~
【その2】 資料はこちら http://oval-rms.com/daikin2016060101.pdf

1.全体構造図 (2頁目をご覧ください。右下に頁数があります):
2頁目の下半分には、当基金のH27/3決算での積み立て状況を図表化しています。

左側の二段重ね四角形は、資産の状況を表します。
黄色部分は「純資産」459億円。基金がH27年3月末で実際に保有している年金積立金額です。
その上の緑色部分は「特別掛金収入現価」116億円です。これは、現在事業主が負担している特別掛金(年間約11億円)の向こう15年分負担合計額を現在の価値(現価)に引き直したものです。実際に116億円があるわけではなく、向こう15年で事業所の皆さんに払っていただく特別掛金の総額が今の金額に換算すると116億円相当である、ということです。基金から見ると、事業主の皆さんから受領する権利がある金額、ということで資産の部に計上しているわけです。

右側の二段重ね四角形は、負債の状況を表します。
下の黄色部分は「代行債務」436億円。基金は国の厚生年金を代行給付していますが、その厚生年金部分の将来給付(受給権者10,400人と加入員9,400人に対して)を保全するために必要な現時点での積立額は436億円、ということです。基金が解散して国に代行部分を返上(返還)する時には、この代行債務に相当する積立金(純資産)を満額で国に返還することになります。
「純資産」が459億円あるので、国の代行債務分436億円を返還しても差し引き23億円が残ります。ですから代行割れ(資産が代行債務を下回る状態)を解消し、+23億円超過しているということです。
その上に乗っている緑色の四角部分は、基金の上乗せ分給付を保全するために現時点で必要な金額で「数理債務」と呼びます。これが83億円となっています。つまり、上乗せ分年金の将来給付(受給権者10,400人と加入員9,400人に対して)を保全するために必要な現時点での積立額は83億円ということです。
さらにその上に薄紫色の四角形で「剰余金」56億円、となっています。これは、左側の資産の部に計上されている金額(純資産459億円+特別掛金収入現価116億円=575億円)と、右側の債務の合計額(代行債務436億円+数理債務83億円=519億円)との差額で、56億円が剰余金として計上されているものです。これで、左右の箱の高さがそれぞれ575億円でバランスするということです。

さて、ここで数理債務(緑色の四角形)から点線矢印で右下に引っ張って「最低積立基準・数理債務」143億円、と記載しているものを見てください。H27/3決算で「数理債務」83億円と計上しているものがなぜ143億円になるのでしょうか。このカラクリはこうです。数理債務83億円の計算のもとになっているのは予定利率5.5%という数字があります。毎年5.5%の利回りで運用できるとすると現時点で83億円あれば上乗せ年金の将来給付分は賄える、ということです。
しかし、5.5%という高い運用利回りは非現実的です。そこで厚生労働省から一つの計算基準として2.5-2.6%の予定利率で計算し直すことが要求されています。5.5%よりも低い2.5%-2.6%利回りで再計算した数字が「最低積立基準」での数理債務というもので、これが143億円というわけです。将来の上乗せ年金給付額は決まっていますので(=確定給付)、運用利回りが低い分だけ、現時点で必要な積立額は増える、ということです。
つまり現実的な利回りで再計算すると、上乗せ分の債務額は143億円に膨張し、代行債務436億円と併せて合計579億円になります。これでは、資産の部(純資産459億円+特別掛金収入現価116億円=575億円)<負債総額579億円、となるので、現実的には▲4億円の不足となっているのが実態です。

もう一つ、注目すべきなのは、「最低積立基準・数理債務」143億円の内訳です。
上乗せ分年金の将来給付(受給権者10,400人と加入員9,400人に対して)の保全に必要な金額が143億円ですが、その中身を分解すると、受給権者分95億円、加入員分48億円となります。しかも、その受給権者分95億円のなかには、”親なし受給権者”分24億円が含まれています。
代行割れ解消・超過分が23億円あるといっても、その金額では、親なし受給権者の分(24億円)すら賄えない、ということが判明しました。
つまり、現実的には143億円の上乗せ分必要額に対して、わずか23億円の資産しかない(積み立て割合は16%;23億円÷143億円)、差し引き120億円の不足状態である、という現実が判明したわけです。
さらに、当基金は加入員からも上乗せ分掛金を徴収していますが、基金解散の場合には加入員拠出分(合計7億円)はまず拠出者(加入員)に優先返還しますので、残る資産は16億円(23億円-7億円)とさらに小さくなります。

以上が当基金の全体構図と財政の実態です。
3頁目以降の解説は、次に。

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