次に、後継制度の内容について解説します。
1.キャッシュバランスプランとは:
下図は「ベネフィット・ワン企業年金基金」パンフレットからの抜粋です。
従来の確定給付年金制度では、将来の給付額が経済環境などに関わらず
確定されますが、キャッシュバランスプランでは金利動向に応じて積立額と
給付額が変わります。掛金拠出の累計額に、積立期間中の国債等に連動
した実勢利回り(下図では再評価率)での利息を付与する、いわば、
市場利回り連動型での積立金計算方式なので、資産運用に起因する積立
不足が発生しにくい仕組みで、数多くの企業年金制度で採用されています。
2.後継制度の掛金と給付内容:
後継制度の具体的モデルは次のようになっています。
(議案2.-4「後継制度の概要」から)
・標準掛金;標準報酬給与の1.0% ・・・・平均給与30万円
・予定利率;2.0%
・加入期間;45年(20歳加入、65歳給付開始)
→標準掛金累計;30万円×1.0%×12ヶ月×45年≒162万円、
の掛金元本に対して毎年2.0%の利息が付与されて、
⇒65歳時一時金額242万円、これを20年確定年金にすると
年金年額14.7万円(20年分総額294万円)、となります。
(下イメージ図)
しかし当基金の後継制度では「特別掛金」2.4%の負担が14年間(H30/3移行
の場合の償却期間)予定されています。平均給与30万円の2.4%を14年間
負担する場合の負担額合計は121万円となります。
この特別掛金負担を含むイメージ図は下のようになります。
この図でお分かりのとおり、事業主は標準掛金計162万円と、特別掛金計121万円
合計283万円を拠出して、社員本人に支給されるのは242万円(一時金)となり、
これでは”逆ザヤ赤字給付”となることが一目瞭然です。
そもそも特別掛金とは積立不足分を償却(穴埋め)するための追加掛金です。
後継制度は現基金の受給権を満額保全で引き継ぐので、現基金の積立不足も
そのまま後継制度に引き継ぐことになり、特別掛金負担は当然と言えます。
そこで事業所が考えるべきは、その追加負担が自社の加入員と受給権者(OB)
の積立不足分の穴埋め負担として妥当かどうか、という点になります。
例えば、加入員50人の事業所の場合には、後継制度での特別掛金負担総額が
約6,050万円(121万円×50人)に上ることになりますが、それが自社加入員と
自社OBの積立不足分に対して妥当かどうか、ということになります。
では、その点をどう検討すればよいのでしょうか。次の試算が目安になります。
特別掛金2.4%(償却期間14年)の前提条件は、H30/3移行・移行時資産46億円
ですが、H30/3移行時の上乗せ債務(最低積立基準額)は、財政見通し計画から
141億円(523億-382億円)と計算されますので、上乗せ資産46億円を”平等”に
分配するとなると、分配率は46億円÷141億円=32.6%となります。
上乗せ債務141億円の内訳が加入員分33%、受給権者分64%と、H27年度末と
同じと仮定し、またそれぞれの人数も同じだとすると、次の試算ができます。
加入員 受給権者 合計
債務額(割合) 46.5億円(33%) 94.5億円(64%) 141億円(100%)
人数 9,391人 10,492人
平均債務額① 49.5万円/人 90.0万円/人
移行時資産額 15.2億円(33%) 30.8億円(64%) 46億円(100%)
平均資産額② 16.2万円/人 29.4万円/人
分配率②÷① 32.7% 32.7%
不足額①-② 33.3万円/人 60.6万円/人
⇒加入員1人&受給権者(OB)1人の不足額合計は、約94万円となるので、
制度開始時点の不足額94万円を14年間で埋め合わせるすると、利息
込みで約121万円の特別掛金累計額にほぼ相当すると見えます。
⇒つまり、加入員1人に対して自社OB受給権者1人を抱える事業所に
とっては、この特別掛金(2.4%×14年)は妥当、ということになります。
(加入員1人+受給権者1人≒94万円不足を、14年間121万円で穴埋め)
となると、加入員50人の事業所では、自社OB受給権者が50人以上で
あれば後継制度に加入するのはお得ということになります。
逆に、自社OB受給権者が加入員数より少なければ、加入するのは損だ
ということになります。
これが後継制度に移行するかどうかの判断の一つの目安になります。
自社OB受給権者が何人いるのか、またOB分の債務額(最低積立基準額)
は幾らなのか、データを基金から取り寄せれば、さらによく分かります。
(続く)